顎顔面矯正学分野の研究

顎顔面矯正学分野の研究

 顎顔面矯正学分野における研究は、現在5グループに分けられており、それぞれの研究グループが専門性の高い独自の研究テーマを持ち、さらに各グループ同士が連携をとることで、新たなブレイクスルーが得られると期待されます。研究内容としては、新規矯正歯科デバイスの開発や先天性疾患の原因遺伝子の特定、脳機能画像(fMRI)を用いた顎口腔機能の解析、不正咬合に関する疫学研究などの基礎研究に加え、多岐にわたる臨床研究などを精力的に行っております。

新規デバイス/イメージング技術開発グループ

 新規デバイス/イメージング技術開発グループでは、矯正歯科治療をより効率的かつ効果的に行う新たな技術を開発すべく研究を行っております。

 安全かつ有効な新規歯科矯正用アンカレッジデバイスの実現を目的に、迅速な骨接合を可能とするハイドロキシアパタイトコラーゲン(HAp/Col)ナノ複合体コーティングを開発しました。さらに本技術の臨床応用に向けて、HAp/Colが迅速に新生骨を誘導する生物学的機序の解明、ならびに有限要素解析によるデバイス形状最適化の研究を行っております。

 良好な噛み合わせと歯並びを維持するためには、舌の体積と口腔内容積のバランスが重要と考えられます。当グループではCT画像から舌周囲組織を三次元的に再構築し、舌体積と口腔内容積を測定する新規手法を開発しました。また両者の間にはある一定の関係性が存在することを解明しました。

顎口腔機能センシンググループ

 顎口腔機能センシンググループでは、噛み合わせが悪いと、脳や全身の機能にどのような影響を及ぼすか等の、機能に関する問題を解明すべく研究を行っております。

 機能的磁気共鳴画像法(functional MRI; MRIを用いて脳内の血流を観察し、脳の働きを調べる手法)を用いた研究では、強い力を発揮する際に、良く噛みしめることで脳や全身の機能をより活発に働かせることがわかりました。

 さらに物を噛む運動時には、臼歯で力強く咀嚼する機能、および前歯で繊細に運動をコントロールする機能の、二つの脳内司令塔が働く可能性を見出しました。

 視線計測(eye-tracking; 眼球の動きを解析し、人の興味・関心を評価する)という手法を用いた研究では、よく咬むこと、咬めることが、過食予防につながる可能性を見出しております。

バイオマーカー探索グループ

 バイオマーカー探索グループでは、基礎研究を通して骨系統疾患の病態の解明や骨格的な不正を呈する患者に対する新規治療法の開発を進めています。

 リラキシンは分娩の際に恥骨結合や周囲の結合組織を弛緩させ、産道を開大させることで広く知られています。当分野では、リラキシンの骨や骨縫合部における作用について解析を行うことで、頭蓋顎顔面領域における顎整形力を用いた新規治療法の開発を行っています。

 PCRの原因は不明であり、予後の予知方法や治療方法が確立していない難症例です。
新規動物モデルの作成・メカニズム解析や臨床情報・バイオリソースの蓄積ならびに解析を行い、病態解明を目指しています。

臨床評価 / 医療検証 グループ

 臨床評価/医療検証グループでは、日々の診療において集積したデータを解析し、様々な特性を持つ患者の治療のプロセスやその成果を評価することで、医療の質の向上を図るべく研究を行っております。

臨床インフォマティクスグループ

 臨床インフォマティクスグループでは、当分野の患者情報のデータベース化を行い、臨床情報に基づいた研究を行なっております。それ以外にも一般集団における不正咬合に関する情報の蓄積ならびに遺伝的な要因を解明すべく研究を行なっております。

 モンゴル国ウランバートル市の都心部と郊外に位置する2つの学校に通う思春期児童を対象に、不正咬合の診査および口腔関連QoLに関するアンケート調査を行なったところ、不正咬合のうち上顎前突と過蓋咬合であると口腔関連QoLが低下する可能性を見出しました。