顎顔面矯正学分野の臨床

 一般的な矯正歯科治療に加え、顎変形症、口唇裂・口蓋裂、先天性疾患を有する患者の歯、咬合、顎骨および顔面の不調和に対し形態的、機能的な口腔環境の不調和を除去し、限りなく健常な状態へ近づけることを目標とし、日々の臨床治療を行っております。
 当分野では、矯正歯科治療の専門性をさらに高めるために臨床グループを5つに分け、それぞれのグループが互いの連携を保ち臨床を行っております。

顎変形症グループ

 顎変形症とは上あごまたは下あごあるいはその両方の大きさ・形・位置などの異常によって、顔面の変形と咬み合わせの異常を起こしている状態を言います。咬み合わせに加え骨格の問題が認められる場合には、矯正歯科治療単独での治療は難しく、あごの骨を切る手術を併用する外科的矯正治療が行われます。外科的矯正治療により、上あごと下あごのバランスおよび咬み合わせは改善し、咀嚼機能や発音をはじめとした口腔機能も改善されます。
 当分野では顎変形症を専門としている口腔外科医とチームを組み、それぞれの専門知識や技術を集約し、患者さんに適した最新の治療を行っております。治療を希望される方は、ご相談ください。

口唇口蓋裂グループ

 口唇裂・口蓋裂は頭蓋顎顔面領域において最も多いとされる先天異常であり、日本人における発症率は出生児500人に1人と言われています。
 東京医科歯科大学歯学部附属病院では、歯科総合病院の特色を生かして矯正歯科、口腔外科、小児歯科、補綴科、言語治療部などの専門治療科によるチーム医療を行なっており、それぞれの科で専門性の高い治療を提供することができます。また、歯学部附属病院では合同カンファレンスを通して、患者さん一人一人に最適な治療を提供できるよう、各診療科間で情報を共有しております。さらに口唇裂・口蓋裂の治療は、小児期から成人期まで長期間にわたりますが、1つの病院で対応可能な施設となっております。

先天異常グループ

 当分野では、生まれつきの疾患に起因する咬み合わせの異常の治療を行っております。先天異常疾患の中で、顔や顎、口、歯などになんらかの症状を持つ疾患は約70%を占めると言われており、咬み合わせや歯並びに様々な問題が生じる場合が少なくありません。
 先天異常疾患の中で 「別に厚生労働大臣が定める疾患」iconに該当する場合は、咬み合わせの異常に対する矯正歯科治療が保険診療の対象となります。また、平成30年度より上記に該当しない先天異常疾患においても保険診療の対象となる場合もございますので、咬み合わせが気になる方は是非一度ご相談ください。

生理学グループ

 矯正歯科治療は、見た目の改善だけでなく、咀嚼機能や発音機能などの「口腔機能」の改善にも大きく貢献します。そのため、保険診療の適応となる顎変形症患者の診断においては、咀嚼筋(噛む時に働く筋肉)の活動の大きさや、開閉口時の下あごの動き方の評価等の、「口腔機能」の検査が必須となっております。
 当分野ではその他にも、顎の関節を左右でバランスよく動かしているかを検査する装置や、顎の形態が一因となって睡眠時に無呼吸状態になりやすくなっていないかを評価する装置等、より詳細な顎顔面領域の機能を評価する検査も行っており、歯並び以外の症状を加味した矯正歯科治療の計画立案において重要な位置づけとなっております。さらに、これら一つ一つの検査結果はデータベースとして保管され、今後のより良い矯正歯科治療の発展へと還元されます。

TADsグループ

 従来、前歯を後方に移動させる時に奥歯が前に来ないように押さえておく必要がある場合は、ヘッドギアなどの着脱式の装置が多く使用されてきましたが、装着時間に制約があり、使用時間によって治療結果が異なるといった問題がありました。歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療においては、ヘッドギアなどの装着の負担がなく、また従来の方法では不可能であった方向へ歯を移動することが可能になるため、今までは治療が困難であった症例にも対応することができるようになりました。
 また現在治療に用いられている歯科矯正用アンカースクリューは、植立の際、骨の中にある歯の根を損傷する危険性が高いことが問題となっています。そこで当分野では、従来品よりも短い新型歯科矯正用アンカースクリューの研究開発を行い、現在特定臨床法に基づく臨床研究を行なっております(臨床研究実施計画番号jRCTs032180394)。